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こんにちは。練馬区桜台の電気工事会社「株式会社KOI-DEN」ブログ担当です。
建設現場では、ときどき戦争が起きます。
そこには銃も戦車も登場しませんが、**「言葉のマシンガンの打ち合い」**が繰り広げられます。
それは、
「言った軍」
と
「そんなの聞いてない軍」
の熱い死闘です。
「それ、追加工事ですよ」
「いや、最初からお願いしていたはずです」
「そこまでやるとは聞いていません」
「この前、現場で話しましたよね?」
建設業界に長くいる方なら、一度くらいは遭遇したことがあるのではないでしょうか。
今回は、そんな「言った言わない戦争」について、以前、職人や現場代理人として現場に入っていた経験から考えてみたいと思います。

先に断っておきますが、あくまで個人の意見です。
職人をしていた頃、こんなことを言われることがありました。
「ここ、まだボード貼ってないから変更できますよね?」
「コンセントの位置、こっちに変えてほしいんです」
確かに、まだ壁は塞がっていません。
電線も見えています。
今なら変更できそうに見えます。
そんなとき、私はよく、
「いくらで?」
と即答していました。
もちろん、その場で私が勝手に追加工事の金額を決めようとしていたわけではありません。
一職人が現場で請負金額を決めていい、という話でもありません。
今なら、
「変更自体はできます。ただ、追加工事になる可能性があるので、まず会社同士で確認しましょう」
と答える方が正しいでしょう。
ただ、当時の「いくらで?」にも意図はありました。
変更を受ける前に、
「これは当初の仕事とは別の“変更”ですよね」
という共通認識を作りたかったのです。
現場に慣れていない人から見ると、
「まだ壁を貼ってないんだから、簡単に変えられるでしょう」
と思うかもしれません。
実際、本当に簡単な変更もあります。
でも、見た目では簡単そうでも、電線を引き直したり、支持材を移動したり、別の配線と干渉したり、材料を変更したり、他業種と調整したりすることがあります。
そして、この手の話で一番まずいと思うのが、
「まあ、やっておきますよ」
と何となく引き受けることです。
その場では話が早い。
元請けにも施主にも喜ばれる。
ところが実際に施工すると、思った以上に大変だった。
そこで工事が終わってから、
「実はあそこの変更、大変だったんで追加料金ください」
と言う。
これは施工側にも問題があると思っています。
相手からすれば、
「だったら最初に言ってくれれば、その金額で変更するか判断できたのに」
となります。
施工側からすれば、
「変更を頼んだのはそっちでしょう」
となる。
こうして第一次「言った言わない戦争」が開戦します。
追加工事で揉めると、
「元請けが悪い」
「下請けが弱い」
「施主が途中で変更した」
という犯人探しになりがちです。
でも、その前にやるべきなのは、
何が起きたのかを分類すること
だと思っています。
現場で起こることを大きく分けるだけでも、少なくとも4種類あります。
これは当初の契約や見積りに含まれている仕事です。
図面、見積書、仕様書などで当初から決まっていたのであれば、基本的には施工側が行うべき仕事です。
壁を開けてみたら想定と違った。
既存設備が図面と違った。
他業種との干渉が判明した。
改修工事などでは、施工してみなければ分からないこともあります。
これは、単純に「誰かが途中で追加した」とは言えないケースです。
「やっぱりコンセントをこちらにしたい」
「照明を一つ増やしたい」
「スイッチを移動したい」
施工が進んで完成形が見えてくることで、施主や発注者から新しい要望が出ることがあります。
これは当初の内容から変わるのであれば、変更として整理する必要があります。
そして、これも忘れてはいけません。
図面と違う位置に施工した。
指示された内容と違った。
施工不良があってやり直す。
これは基本的に「追加工事」ではありません。
施工側の責任による手直しです。
何でも、
「手間が増えたから追加です」
と言えばいいわけではありません。
追加なのか。変更なのか。現場条件によって発生したものなのか。それとも自分たちの施工不良なのか。
ここまで同じ物差しで整理して、初めて「線引き」になると思っています。
誰が変更を求めたのか。
なぜ変更が必要なのか。
当初契約に含まれていたのか。
金額は変わるのか。
工程には影響するのか。
このあたりを、工事が終わってから考えるのでは遅い。
変更が発生した時点で一度整理する必要があります。
国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインでも、追加・変更工事によって工期や請負代金が変わる場合、追加工事に着手する前に見積りや契約変更について適切に手続きを進める考え方が示されています。
現在は紙だけではなく、メールなど後から内容を確認できる方法も活用できます。
大事なのは、
「あのとき話したでしょう」だけで終わらせないこと
だと思います。
これはあくまで私自身の経験から感じていることですが、
追加工事について毎回曖昧な会話をしている現場ほど、現場そのものも散らかっている
ことが多いように感じていました。
ここでいう「散らかっている」は、床に電線や材料が転がっている、という意味だけではありません。
誰が何を決めたのか分からない。
どの図面が最新なのか分からない。
変更内容が職人まで届いていない。
材料の置き場所が決まっていない。
明日の工程が共有されていない。
そして、
「これは追加なのか、当初工事なのか」も誰も分かっていない。
私は、こういう状態も立派に「散らかった現場」だと思っています。
モノだけではなく、情報が散らかっている。
責任の所在も散らかっている。
工程も散らかっている。
建設現場では多くの会社、多くの職種が同時に動きます。
だから段取りが曖昧だと、時間が経つほど散らかっていきます。
最後は、
「俺は聞いてない」
「いや、伝えた」
「誰に?」
「○○さんに」
「俺には来てない」
となる。
この光景を見たことがある人は、少なくないと思います。
規模の大きな現場では、変更管理や書類のルールが比較的整っていることがあります。
一方で、小規模な店舗工事や改修工事など、現場主義で動いている現場では、
「とりあえずやって」
「あとで話そう」
が発生することがあります。
そして、その「あとで」が本当に問題になります。
記録がない。
金額も決まっていない。
誰の指示だったのかも曖昧。
そうなると最後は、論理ではなく、
声の大きい人が勝つゲーム
になってしまう。
個人的には、これはかなり現代的ではないと思っています。
建設現場は、相手を出し抜く場所ではありません。
元請けから仕事をもらい続けたいからといって、何でも、
「大丈夫です」
「やっておきます」
で受けることが正しいとも思いません。
その場では気に入られるかもしれません。
でも、その積み重ねで自社や職人が疲弊するなら、長くは続きません。
とはいえ、現場には助け合いも必要です。
「今回はこっちでやっておきますよ」
ということが、すべて悪いわけではありません。
困っている業者を助けることもある。
工程を守るために、自分たちが少し動くこともある。
そういう関係性があるから、現場が回ることもあります。
ただ、
「本来は追加になる内容ですが、今回は協力します」
と、
「何も言わずにサービスしておきます」
は、似ているようで違います。
前者は、お互いに本来の責任範囲を理解したうえで協力しています。
後者は、境界線そのものが消えています。
そうすると次の現場で、
「前もやってくれましたよね?」
になりかねません。
線を引いたうえで助ける。
私は、その方が健全な協力関係だと思っています。
以前の記事で、現場ではコミュニケーション能力が重要だという話を書きました。
これは今でもそう思っています。
ただ、
コミュニケーションだけで全部丸く収めようとするのも違う
と思っています。
何が当初契約だったのか。
何が変更なのか。
変更理由は何なのか。
誰からの依頼なのか。
費用はいくらなのか。
工程への影響はあるのか。
それとも、こちらの施工ミスなのか。
これを整理してから相手と話す。
つまり、
論理を作ってからコミュニケーションする。
これが大事なのではないでしょうか。
愛想よく、
「大丈夫ですよ!」
と言える人より、
「変更は可能です。ただし当初の施工範囲とは変わるので、金額と工程への影響を確認してから進めましょう」
と言える人の方が、長い目で見れば信頼できる。
逆にこちらにミスがあるなら、
「これは当社の手直しです」
と言える。
どちらに転んでも、同じ基準で話せることが大切だと思います。
元請けにも利益があります。
下請けにも利益があります。
施主には予算があります。
職人には時間があります。
それぞれ立場が違うので、意見がぶつかること自体は珍しくありません。
でも、最終的な目的は同じです。
きちんと建物をつくること。
きちんと内装を完成させること。
安全に工事を終わらせること。
そのために、それぞれが責任範囲を持って仕事をしているはずです。
だから追加や変更が発生したら、誰かが損するまで曖昧にしておくのではなく、その時点で一度整理する。
すぐに金額まで確定できないこともあります。
それなら、
「この作業は当初契約とは別の変更として扱う」
「金額は確認後に提示する」
「工程への影響も確認する」
というところまででも、後から確認できる形で共有しておく。
全部決まってから話すのではなく、決まっていないなら“決まっていないこと”まで共有する。
これだけでも、「言った言わない戦争」の発生率は下げられると思います。
今振り返れば、
「いくらで?」
という私の返答は、やはり少し乱暴だったと思います。
もう少し大人なら、
「変更できます。ただ、追加になる可能性があるので、一度確認しましょう」
くらい言えたはずです。
でも、考え方そのものは今でも変わっていません。
変更できることと、無料で変更することは別。
施工できることと、契約に含まれていることも別。
そして、
手間がかかったことと、追加工事として請求できることも別。
そこを最初に整理しておけば、
「言った」
「言ってない」
で争う必要はかなり減ります。
現場で本当に必要なのは、
相手を言い負かす能力でも、
何でも引き受ける営業力でもなく、
起きていることを整理して、線を引いて、それを相手に伝える能力なのかもしれません。
「言った言わない戦争」。
僕だけが無くしたいと思っているわけじゃないと思います。
ジョン・レノンも言ってましたよね?
……ちょっとオーバーですかね。
株式会社KOI-DENでは、店舗・テナント工事をはじめ、電気設備の施工や、工事途中で発生する設備変更・追加工事についても、内容を整理しながら工事を進めています。
工事途中で設備の変更や追加が必要になった場合も、「できる・できない」だけで判断せず、施工内容や費用、工程への影響を確認したうえでご相談いただければと思います。